張り替え職人の技術

   前回の買い付けでこんな椅子を買ってきました。
どうでしょう?1950年代のモダンではなく、もう少し前。。。。
アンティークの部類にも入らない、とても面白い椅子。
見る限り、その手の込んだつくりがその美しさと、手作り感が醸し出す温かみを感じさせます。昔の椅子の魅力を振り撒いていますが、いかんせん、、、、それこそ「座り倒され」生地もぼろぼろ、かなり汚いです。
でも、私はこの椅子を逃しません。
 やはり良いものでした。
こういった古い椅子の中身は、現在生産されている椅子と違い、シート内部にはヤシの繊維、獣毛などの天然素材が詰め込まれている場合が多いです。「このような素材のものだから良い!」ということではないですが、ウレタン材の物と比べて、まったく違うすわり心地になり、出来上がりを想像するだけでわくわくしてきます。
これら素材は一度取り出し、再度、形を作りながら詰めていくという、とても難しく、熟練の技術が必要な作業になってきます。
  
   さらに座面下にはバネが。。。。。
バネの調整・組たてなど、素材の詰め替え同様非常に難易度の高い技術を必要とします。
ばねの位置を固定する紐も縦横無尽に張り巡らされます。
 内部を見てください!
シート下バネ全体をまとめる役割をしているフレームにバネをひもでくくりつけています。
その結び目自体、芸術的!
美しい仕事です。
 
    シート部分にも同様にヤシの繊維や藁や、なんやらいろいろ入っています。それを形創り、その素材が出来上がり後も偏らないよう、部分部分にある程度ひもで固定させています。
また、シート周囲に「土手を作る」という作業。繊維やらわらなどを「ただ積んでいく」のではなく「角を出す」作業です。
溜息ものの仕事ですよ。
 張り地は日本製です。
海外のやたら高い生地を張るのをよく見ますが、世界に誇る日本繊維業界。私は技術的・品質的に劣るものとは考えません。同じような生地で商品単価だけをアップさせるよりは、まったくリーズナブルです。
それにしても、素晴らしいすわり心地。好みによりますが、がっしりとした素材の感触が、体全体をサポートしているような感覚です。
あの椅子が、このように生まれ変わった姿を見ますと感激ですが、職人さん有りきの買い付けです。こういったレベルの高い仕事に囲まれると、私の未熟さが浮き出てきますが、日々勉強。仕事に対する姿勢も見習わなければいけませんね。
この椅子はまた商品ページで紹介いたします。